コレがそんなに楽しいか!?
みにまむ。
「とりあえず、なんであんたがこんなものを持って来れるのかは、コロナがいるからだって事にしといてやるから、俺が着られる服を持って来い」
「だから、持ってきただろう。お前が着られる服を」
平然と言い放つ火のマナにこれ程、殺意を覚えた事も無い。――ぎりりと拳が白くなる程握り締めたロゼの、赤く染まった頬がついに林檎色から熟したトマトの色に変わった。
「これは女物だろうが!!」
揺れる裾がピンクなら、腕を包む袖もピンク。胸元を彩る少し濃い目のピンクの釦をアクセントに、ふわりと広がるレースの装飾。常の色合いとは真逆とも言える愛らしい色に身を包み、白い素足で広すぎるベッドの上を歩いてユンに詰め寄る小さなロゼは大人しくしていれば非の打ち所の無い美しい少女人形のようだ。無論、ロゼがその表現を喜ばしく思うかと言えば、答えは否だが、ユンにしてみれば暫く掌に乗せて愛でたいくらいには可愛らしいと思う。
「今のお前のサイズがこれしかなかったんだ。諦めて、このままアトリエに行くぞ」
言えば、さあ、と引く血の気の音。
「ふ、ふふ、ふざけるな!こんな格好で出られるわけないだろ!?」
「似合っているのだから問題はないだろう?」
青くなりかけた顔色がまた赤く染まって、なんとも忙しい。人形の服とはいえ、とてもよく似合うのに、何がそんなにも気に入らないのだろう。全く、人間の感覚とは分らない事が多い。
はぁ、と溜息をついて、ユンは青と桃色のコントラストを今一度眺めた。
青い髪に映える桃色は白い肌まで染めるように清楚で愛らしく、むずがるように肩を縮めるロゼの身体を包んでいる。合う靴の無かった足は素足のままで、開いた窓から吹き込む風が悪戯心を擡げて遊んだ裾がふわりと翻って眩しい腿のきわどい所まで晒してしまいそうになる度に冷めかけた熱をまた顔に昇らせて裾を押さえる仕種が可愛くてたまらない。
自然と緩む頬を固めるのに少しだけ必死になっている事など、ピンクの裾を真っ白な両手で握り締める彼は知りもしないだろう。
「とりあえず着替えを済ませろ。アトリエに行けば戻れる方法があるかもしれない」
そ知らぬ顔でそれっぽい事を言って見せながら、ひらりと小さな手元に落としたのは愛らしいピンクのリボン。
呆然と手に落とされたものを見つめたロゼの動きが止まって、数秒。――――ぐしゃり。震える手に握りつぶされた桃色が酷い皺を作った。
「お、まえ……!!」
絶対、遊んでるだろう!と叫ぶ彼に、この程度で罰は当たらないだろう、と口から零れそうになった言葉をユンは辛うじて飲み込んだ。
みにまむ。別バージョン…。
いや、ほら、ユンはコロナという娘がいるじゃないですか…そんなこんなでお人形の服を持っててもおかしくないなぁ、と…何で今、持ってるのか、と聞かれればそれは…わからないですけどね??(目を逸らす)
ピンクなロゼが恥ずかしがってる様とか…ハァハァ…可愛いと思うんだ…思うんだよ…!
このあとアトリエに行って、さらに着せ替えさせられるといいと思います!(挙手)
勘弁してくれ、本当に。
みにまむ。
夢だ。ロゼリュクス・マイツェンは即座に現実逃避を実行した。
とりあえず、したくも無い説明をしなければならないとすれば、その認めたくない奇妙な夢とは、端的に言えばこんなものだ。――指輪をフラフープに出来るくらいに小さくなってしまった自分が、何故か上機嫌な銀髪赤眼の男の頭に乗せられて移動している、と。これが夢でない筈が無い。しかも自分がしがみ付いているものがその男の、所謂、アホ毛だなんて信じ難い事実…否、夢、だ。こんなものが現実である筈がない。あってはならない。それなのに、
「残念だねー、ちゃんと現実だよー?チョコあげるから夢の世界から戻っておいで、ロゼ」
「いるか、馬鹿!!」
ほーら、餌だよー。目の前に差し出されてくるチョコレートを弱くなった力で叩き落して――ついでに落ちたそれが彼の鼻先に当たって「あいたっ」なんてわざとらしい声が上がるのを冷めた眼で見てやった――声を荒げるロゼを相手に、からから笑う彼は銀色の髪を揺らして歩く。
「ひどいなぁ。葉っぱに埋もれそうになってる所を助けてあげて、尚且つ、学園の近くまで送ってあげよう、なんて、凄い優しい事をしてるボランティア精神旺盛な僕にこんな仕打ち…」
よよよ、なんてわざとらしく泣き真似をされてもちっとも可愛くない!それどころか、この男の奇天烈具合を身に沁みて知っているだけに余計に腹が立つ。
そもそも、この男…ルゥリッヒに運搬――実に腹立たしいが、状況的にはこの言葉がしっくりくる――されている事自体に腹が立つというのに、更には餌付けして楽しんでいるというのだからロゼが青筋を立てない訳が無い。当のルゥリッヒといえば、それを見て更に楽しんでいるのだけれど。
殺気立って震える小さな身体の前に再度、チョコレートが差し出される。それすら、今のロゼには抱えて食べなければならないくらい大きなものだ。常であれば指で摘める大きさの筈のそれに自らの小ささを思い知らされるようで、惨めさが深く胸を抉る。
「ほら、食べなよ。たまには年上の言う事も聞かないとだめだよ?」
それは相手が参考に出来る人間かどうかにもよるだろう、と思いながら、少しだけ滲み掛けた視界を擦って、漸く焦点を合わせたロゼは紅葉よりも小さな白い手をゆっくりと甘い香りを漂わせて大きな手に摘まれたそれに伸ばした。
恐る恐る伸ばされる手の、小さな小さな、細い指先がそっと艶やかな表面に触れ、ぺたり。掌が触れる。
伝わってくる、冷たくも無く、熱くも無い感触を目一杯伸ばした掌で感じながら、誘うようにゆらゆら揺らされるチョコレートがこの上なく憎らしいと思った事も、微笑みながらそれを差し出してくる男をどこか憎めないと思った事も、きっと全部、小さくなってしまった副作用なんだろうと決め付けたロゼがチョコレートと、ついでに銀色の髪を抱え込んだのと同時に、チョコレートが指から消えた事に苦笑したルゥリッヒが肩を揺らした。
「次は苺とかあげようか」
「…ショートケーキなら食ってやる」
時間切れで元に戻ったロゼがルゥリッヒに倒れこむまであと数分。
みにまむ。別バージョン(?)でした。以前、日記の方でヴェインバージョンをヤったので今度はロゼです。
巷がちっちゃい何かに萌えているので、それに便乗、というのもありますが(笑)
ちっちゃいロゼがルゥといるならどこに装備(違っ)するか、というと…まあ、アホ毛だろうな、と。アホ毛がどんだけ強いんだ、みたいな問題はありますが、そこは、ほら、ファンタジーだから(ォオオイイィ!)
……要はちっちゃいロゼを餌付けするルゥと、アホ毛にしがみ付いてじりじりするロゼのほのぼの(?)が書きたかっただけです…。
この感触は反則だ。
みにまむ。
とりあえず、この状況はなんだろう。――有り得ない状況に項垂れればもふり、とふわふわの毛が心地良く頬を擽った。
「おい、いい加減、放せよ。…寝るのなんか独りで出来るだろ…」
「うー…」
離れようと腕を伸ばせば、それごとぎゅう、と抱き締められて、結局、動けない。
突然小さくなってしまった身体に驚きながら、隠れるようにアトリエに向かおうとしていたロゼがうっかり見つかってしまったのはつい先程の事だ。柱の影からこっそり出ようとして――こんな姿を誰かに見られたら何を言われるか分ったものじゃない!―― 一歩を踏み出したその先でぱちり。藍色のまあるい目と視線がかち合った。暫く二人――正確には一人と一匹だ――で顔を見合わせたまま。一間置いたその後は…思い出すのも億劫だと思う。
はぁ。思わず口から零れた溜息にふよふよそよいだ灰色の毛がまた頬を擽る。――――何だって自分はうりゅに見つかってしまったのか。
見つかって、まずい、と思った直後、いつもの声を上げてマナの子供が飛びつこうと動いたのを認識した時にはもう遅かった。気がつけば、ティトリも認めるふわふわの毛に包まれてぎゅうぎゅう抱き締められ、頬擦りされ、仕舞いにはあの女のアトリエにお持ち帰りされる始末。更には着いた途端、眠い目を擦り始めたこいつは昼寝まで一緒にさせたいらしい。これではまるっきり子供の抱き人形だ。
「頼むから帰らせろよ…」
心地いい体温がじわりと身体を包む感覚に負けそうになりながら、それでも懸命に突っ張ったロゼの腕をうりゅの毛が優しく撫でる。――やばい。こっちまで眠くなりそうだ。
「おい…」
「うぅー…やぁ…ねりゅの…いっしょ…」
ふわりと暖かな風にそよいだ灰色。ちらちら光を弾くそれを星のようだなんて、見当違いな事を頭の片隅で思う辺り、もう大分駄目かもしれない。
「おい、ねるなよ…おれまで、ねむく…」
無意識なのか、静かな寝息を立てながら頬を摺り寄せてきたうりゅに負けて、必死にこじ開けていたロゼの目蓋がゆっくりと蕩けた青色を隠した。
「ねー、クロエー、うりゅ知らない?」
「いるよ…ここに。面白い光景」
「えぇー?………げっ」
更に一騒動起こるのは、また別の話。
みにまむ。別バージョン…またヤってしまったうりゅロゼ…というか、うりゅ+ロゼ。
ロゼがうりゅをもふもふ抱き締めるのも可愛いけど、この設定なら反対も可愛いだろうなあ、と思ったので実行(オイ)
ロゼとうりゅのお昼寝とか絶対に可愛いと思うわけですよ。うりゅに抱えられてふよふよ浮いて運ばれるちっちゃいロゼとかも可愛いですがね!(…)
…この展開だとこの後はちゅーネタの時の大人気無いユンが再来しそうですね(笑)
2009/06/26 |