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 素敵な微笑みを有難う。

いらっしゃいませ

 これは何だ。ロクシスはとりあえず眼鏡を拭いてみた。とても念入りに。きゅ、きゅ、きゅ。よし。かけ直して見た。変わらない。どうやら現実らしい。――――そこまで思考を走らせてから、漸く彼は米神に指先を当てて口を開いた。
「ヴェイン、これは何だ?何故、君がそんな格好をしている?」
 言いながら、目を向けた先で恥ずかしそうに佇む彼に色々な意味で眩暈を覚える。
「えっと…パメラがね、お店屋さんごっこしたいって…」
 お店屋さんごっこ。成る程。お店屋さん。それで君はそんな格好をしているのか。合点が行った様な、行かないような。疑問が一つ解決した事には変わりないのだから、合点が行った事になるのだろうが、それでこの状況を納得できるかといえば、否だ。
 重い溜息をついてもう一度、ヴェインに目をやったロクシスは、ついたばかりの溜息を再び吐き出す。
 黒と白のコントラストが禁欲的な雰囲気を醸し出すその衣装はパメラの趣味なのか、ふんわりとしたレースが其処彼処にあしらわれ、機能的というよりも観賞用というに相応しいものに仕上げられていた。身動ぎをするたびにひらりふわりと白いエプロンと共に緩い軌跡を描く裾は膝丈。黒を基調にした衣が包む袖は手首で折り返された様に見える白いシャツの色で止められている。そこから伸びる手の白さが、少し薄桃に染まっているように見えるのは彼が恥ずかしさに耐えているからだろう。ふわふわとスカートの裾を揺らして膝を擦り合わせる仕草が愛らしい。こちらを伺うように恐る恐る見上げてくる潤んだ青い瞳も薄く染まった頬と相俟って情事の前のようだ。所謂、メイド服というものに身を包んだヴェインは申し分無く可愛かった。
 リップくらいは塗られているのかもしれない唇が言葉を紡ごうと開き、諦めて噤む度にぷるんと震える様が誘っているようで、このまま自室に連れ込んでしまいたい欲望が鎌首を擡げる。勿論、今は出来ないけれど、それまでこの熱に耐えなくてはならないというのも少々苦しい。
 はぁ。呆れと、何か公には言えない感情とが混じった溜息に熱を孕ませて落としたロクシスに追い討ちの如くヴェインが小首を傾げて見せた。
「ロクシスは…お客さん、なんだよね?」
「……私に訊くな…」
 畜生。可愛い。どこで躾けられたのか、行儀良く両手を前に揃えている律儀さが犯罪的だ。
 しかし、同じアトリエにいるにも関わらず、自分が巻き込まれていないのは珍しい。常ならヴェイン諸共、騒動に巻き込まれている筈だが、今回は本当に何も知らされていないのだ。だからこそ、いつものようにアトリエの扉を開けて喫茶店に変貌している様に唖然とした。それから考えれば、自分は確かに客なのだろう。
 何とか冷静に答えを導き出したロクシスが落ち着きかけた理性のぐらつきに安堵しようとした刹那、小さく、よし、と気合を入れたらしいヴェインの赤く染まった顔が愛らしく微笑んだ。

「いらっしゃいませ。お席にご案内致します」

 ふわんと柔らかな銀髪に合わせて揺れたヘッドドレスと同じくらい柔らかな微笑みが必死に繋ぎ止めた理性を苦行かと思うくらい揺るがせたのは言うまでもない。



久々のロクヴェイ…!ほんとは「おかえりなさいませ、ご主人様」って言わせようと思ったのは内緒なんだぜ!(…)
最近は専らロゼばっかり書いてましたが、ヴェインの可愛さを演出するのもやっぱり楽しいですね…!やめられん!
しかし…珍しく健全ムード(?)だな、今回のロクヴェイ…ああ、エロクシスが調子に乗ってないからか(ぇえ)


 じゃあ、テイクアウトで。

此方でお召し上がりになりますか?

「ロゼ」
「何も言うな」
 今のお前に口を開いて欲しくない。言外に告げたロゼが遥か彼方の虚空に目をやったのを見たユンは大人しく口を噤んでやる。
 始まりはエトのくだらないごっこ遊びの提案だった。彼女曰く、つまらないからお店屋さんごっこをしよう、と。無論、アトリエ内で乗り気になったのはぷによくらいのもので、他の面々は渋い顔をした。当然といえば当然だ。課題を終わらせたとはいえ、そんなくだらない物事に付き合う暇は無い。ロゼやユンは勿論、リリアも軽く諫めてから我儘は言わせるだけならタダ、と放っておいたが、傍らのメイドが波打つ金髪から覗く耳にこそりと一つ、耳打ちすれば、アトリエの主の態度はころり、どころか、スイッチを入れたかの如く変わった。
 理由は、ふんわりとしたメイド服に身を包むロゼが接客するのとは違うテーブルからカメラ片手に鼻血を垂らして荒い息をつく令嬢を見れば、言葉にするまでも無いだろう。
 ウィムと同じメイド服に身を包んだロゼの姿を見た時はその類の事に厳しいユンですら感嘆の溜息が洩れた。
 白を基調とした衣装に青の装飾が映える衣装。開いた胸元は胸のないロゼの為に多少、手直しが加えられているらしいが、胸があろうが無かろうが、細い鎖骨と腕を動かすたびにちらちらと光を反射するような白磁の肌は少々、目に毒だと思う。不埒な視線を感じ取った青い瞳が羞恥を滲ませて鋭く牽制してくる様がまた堪らないと言ったら無言で光の刃が降り注いでくるのだろうけれど、見ている側から言わせて貰えば、禁欲的な雰囲気を纏う彼が見せる刹那の色香に男として目が行ってしまうのは、まあ、仕方が無い。
 全体的にふんわりとした印象の――ウィムが着用しているものと同じ型の物なのだから彼女の印象が影響しているのも確かだが――、メイドが着るにしては洒落た感のある服に身を包んだロゼはいつもの冷淡さすらなりを潜めているようにすら見えて、給仕を受けるユンは先程から思わず悪戯しそうになる手を抑えるのに必死だった。
 元来、露出の少ないロゼが肌を晒すのは情欲を煽る事以外の何物でもないが、これは常とはまた違った色気がある。
 かちゃり。静かに置かれた紅茶のカップを持ち上げて、茜色を細めた彼は傍らに佇むメイドを見上げた。――――慣れない手つきで入れていた紅茶の味は、悪くない。
「この後の予定は?」
「質問の意図がわからんが、くだらない事なら付き合わないぞ」
 返る言葉はメイドにしては尊大で。やはり、服装如きに流される性格ではないらしい、と苦笑が洩れる。ご主人様、の一言でも言ってくれれば、この後のデザートはそれはそれは美味しくなるだろうに。その辺りは今夜みっちり教え込んでやろう。寧ろ、今からでも構わない。
 また一口、紅茶を啜ったユンが洩らす艶めいた含み笑いに耳朶を撫でられたロゼの頬が仄かに染まったのは、昼下がりの茶席に到底似合わない熱に気付いたからなのか。
「…此処で妙な気は起こすなよ?」
 横目で諫めた可愛い彼に微笑みかけて、
「安心しろ。テイクアウトだ」

そのままご主人様はメイドと逃避行。



ユンロゼはOTK系からシリアスからエロまで何でも出来るので何を書くか困りますが、らぶらぶな事には変わりない…。要は「テイクアウトで」とユンに言わせたかっただけの代物。
ロゼとウィムさんはカラーリングが似ているので、あの服をロゼが着てもいいんじゃないかと思うわけです(何当たり前みたいに…)
俵担ぎでテイクアウトされちゃった後はメイドの何たるかをみっちりしっかりベッドの上で仕込まれてればいいですよ!


 せめて、いつもので頼む。

ご注文はお決まりですか?

「Bランチでーす!」
「ああ、ありがと…うっ!?」
 ある意味、聞きなれた声音に何の違和感も無く応えようとして、忙しい店内を料理片手にやって来たウェイトレスを見上げた彼は思わず口元を引き攣らせた。
 礼の言葉を綴る筈だった口が最後の一音を奇妙に変化させた事からも、ぽかんと口を開けたままこちらに目をやるウェイトレスの大きな蒼い瞳を見返す自分の顔が酷く間抜けな事になっているのは間違いないだろうが、そんな事に構っていられるような状況ではない。
「あれー?ステルクさん?」
 間延びした高い声音は最近、聞きなれた少女のものだ。間違えようが無い上に、極度の近眼か何かでもない限り見える距離にいる彼女は目の前で短い丈のウェイトレス服――いつも目にする服よりも少し短い気がするのは気のせいだろうか――をひらひらひらめかせて、確かに自分が注文したBランチ片手に呑気に給仕なんぞをしている。
 呆然とする騎士の前に料理を置き、流れるような動作で中身の減った汗かきグラスに氷水を足す姿は手馴れたもの。口を半分開けたままその様を眺める彼は、情けない事に満たされたグラスが笑顔のおまけ付きで差し出されるまで瞬きの一つも出来なかった。
 とりあえず、からりと氷が回るグラスから一口。
「……ロロナ…君は、こんな所で何をしているんだ?」
 落ち着いた、というよりも、落ち着かせた頭を溜息を吐く事で更に落ち着かせて、傍らに立つ彼女を見上げる。普段、自分の方が遥かに背が高い関係から、彼女を見上げる事が少ないだけに、愛らしい面をこうして違う角度から見る光景は中々、新鮮だ。
 内心、思いがけない出会いに気を上向かせるステルクを見返した彼女は質問の意図を測りかねたように、ことりと首を傾げた。
「何、って…イクセくんのお手伝いですよ?手が足りないから手伝ってくれーって言われて」
 偶に呼ばれるんです。そう言って笑う彼女の周りには花が咲くようだ。ともすれば、忙しさから殺気立ちかねない食堂の中、彼女が笑うだけで愚痴を零していた男ですら汚い口を閉じて柔らかな微笑みに目を向ける。――――なんだ、これは。非常に面白くない。
 ちらちらとこちら、否、ロロナに目線をやってはにやにやと下品な笑みを浮かべる一部の男達を目に留めて、ステルクは上向いていた気が急速に降下していくのを感じていた。
 彼女が友人の手伝いをしている事自体は全く悪い事では無い。無いが、いや、しかし。これは、何と言うか、兎に角、面白くない。そもそも、いくら手伝いだからといって、そのメイドのような服はどうなのか。常時、勤務している訳ではないのだから、エプロン一つでもつければ良いだけの話だ。先程から他の男達の視線を集めているのもその服の所為だろうに。
「…その服は?」
 訊きながら、何となく彼女の答えが予想出来たようで、軽く息を吐くステルクは男の何かを擽りそうな――それでも自分だけは左右されないと断言出来るが――姿から、再び水を飲むふりをして目を逸らした。
 返って来る彼女の高い声音が耳を撫でる。
「あー…やっぱりおかしいですよね…。師匠が『これを着ないと手伝いをした事にはならん!』とか変な事言い出して…」
 ひらり。スカートの裾を持ち上げて苦笑いするロロナの手を、そんな短いものをひらひらさせるな、と今すぐ叩いてやりたい。――――そう思った刹那、違うテーブルから野太い呼び声がかかった。
「おーい、こっちにも水くれ!」
「あ、はーい!今行きまーす!」
 すぐさま喧騒を縫って店内に響く声音はすぐに彼女のそれと分るくらい愛らしい。小柄な身体は多忙を極めるこの場においても目を惹くものだと思う。しかし、それが必ずしも良いものだけを引き寄せるかと言えば、答えは否だ。水云々の男もカウンターに直接貰いに行けば良いものを、態々、彼女を呼びたてるのは何か下心があるからに他ならないだろう。――――面白くない。全くもって面白くない。寧ろ、苛々する。
「それじゃあ、私、戻りますね。ステルクさんはごゆっくりどうぞ…って、わっ!?」
 ふわり。また裾を揺らして踵を返した彼女の手を、剣を握るのに慣れた手が掴む。勢い付けて引かれた所為で手持ちの水差しから、ぼちゃりと波打った水が零れて素肌の胸元で弾けたのを驚きの中で見つめたロロナの目がゆっくりと温かな手で触れてくる彼を見返した。
「え、と…ステルクさん?」
「君に一つ、注文がある」
 呆然とする少女に、矢鱈と真剣な騎士。昼時の食堂においては滑稽そのものな光景。一触即発の雰囲気すらあるその空気に、再度、少女を呼ぼうとした男も凍りつく。
 初めの頃に比べれば大分、鋭い眼光に慣れたロロナの細い手から水差しを揺るやかに奪った彼は敵を睨むかの如くに不埒な男を一瞥して、首を傾げる少女の肩を優しく押した。
「着替えて来い」
 水くらいなら私が注ぎに行ってやる。颯爽と、というよりも寧ろ、何か黒いものを背負って注文に応えるべく店内を闊歩しだした騎士に、下品な笑みを浮かべていた男共が冷や汗をかいて店から飛び出たのは言うまでもない。

 居合わせたイクセル曰く、それはそれはある意味、ドラゴンよりも恐ろしい光景だったらしいが、終始、首を傾げてその光景を眺めていた愛弟子からその話を聞いた師匠は一晩中、腹を抱えて笑い転げたという。



楽しかった。私が楽しかった(オイ)攻略本でパイEDのロロナの姿を見てからこれは書いてやろうと思ってたんだ!アレは目の保養と同時に理性に毒だよ!!いいぞ、もっとスカート短くなれ!(ぇえ)
ロロナがこんな服着て給仕に走り回ってる間、イクセルは後ろ向きっぱなしなんだろうな(笑)
タントが居たらその場で口説き、師匠が居たらその場でハァハァし、ジオさんがいたら普通に褒め、ステルクが居たら風紀を語られるんじゃないかと…。
とりあえず、やらしい顔した奴ら全員にジャスティスエンド(ぇえええ)


 どれを選んでも良いのかい?

メニューをお持ちしました。

「お前、帰れ」
「うわ、酷いな、ユーリ」
 僕、一応、お客さん。苦笑しながら言うフレンは手にしたメニューに目を通しながら、長い脚を組んで関心したようにゆったり瞬いて見せた。その様は恰もやんごとなき血筋の末裔のようで、けれども、本性という名の中身を知っているユーリにしてみれば、上辺だけ眺めて熱い吐息を吐く女共のように頬を染めてやる気など起ころう筈も無い。そもそも、この男が態々、騎士の象徴を脱いでまでこの場に居る時点で聖人君子からはかけ離れているのだ。
 ぎしり。乗り上げた褥の文句に、それを零したいのはこちらの方だと思いながら、この部屋に入ってからこの方、何を迷う必要があるのか、じっくりメニューを吟味するフレンの行動はやはり理解出来ないと思う。
 始まりはギルドに寄せられた依頼だ。妙な薬を流している娼館があるらしい、との事だったが、無論、ユーリ達のギルドにそれを暴く技術があるかといえば、答えは否である。客として探りに入るには限界があり、ユーリには全くその気が無く、カロルとラピードは論外。ならば、内部から、とジュディスを見ればそれは素敵な笑顔で返され、反撃のようにユーリが衣裳部屋に放り込まれた。――つまりは、ユーリが娼館に男娼として潜り込んだ、という訳だ。しかも、女装までさせられたのだから、顔に似合わず男気溢れる彼はたまったものではない。最後には折れたものの、早く仕事を終わらせたい事には変わりない。寧ろ、気を急かしている位だ。
 未だに、ふーん、だの、へぇ、だの呟いている幼馴染を横目に、鴉の濡れ羽の如く艶やかな髪を無駄に手触りの良い褥に散らせば、気まぐれに振った爪先から、辛うじて引っ掛かっていた高いヒールの靴が落ちる。
 硬い音を響かせたそれを気に留める事も無く脚をぱたつかせる彼の存外、白く細い脚が揺らめく灯りに照らされて妖艶な影を帯びるのを密かに盗み見るフレンは実の所、先程から湧き上がる情欲を抑えるのに必死だった。
 偶々、立ち寄った町でユーリの仲間と――ここに自分が入っていない事に多少、寂しさを感じているのは誰にも言った事が無い――話した時には驚いたものだ。彼ら曰く、ユーリが仕事で娼館に潜入している、と。それも、女装までして。ユーリが強い事は自分が良く知っている。その所為で無理をすれば何だかんだと出来てしまう事も。女装も不本意だっただろうが、仕事の為なら、と彼が折れたのだろう。服装程度で力量が落ちるとも思わない。万一の事があってもユーリなら問題は無い。しかし…しかし、だ。例えば、妙な薬を使われたりなどすれば、その万一が無いとは言えなくなって来る。彼の仲間達も娼館に放り込んだは良いものの、その辺りが気にかかっていたようだった。
 そこで回ってきた様子見役という名のお鉢がフレンの手に納まった、という訳だ。女性陣の後ろで紫の羽織が必死に自己主張していた気がしないでもないが、フレンにしても、この役を他の男に渡すなど考えるだけで胸糞悪い。
 しかし、この状況は喜んでいいものか、悪いものか。無論、前述した通り、この役を誰かに渡す気は無いが、これは少々、身体の芯に毒だと思う。
 黒髪と白い肌に良く似合うドレスは不遜な態度すら色気に変える。化粧など必要無い美しい面が目を細め、緩く笑みを刷く様はどれ程扇情的なものだろうか。今、褥に座る傍らで気だるげに白い脚をぱたつかせる彼の長いスカートが、下着が見えそうな際どい位置まで捲れて肌を晒してしまっているのですら、騎士団で鍛えた筈の忍耐を打ち砕くのには十分すぎるくらいだ。これが自分でなかったなら、どんな事になっていたか。想像するだけで腸が煮えくり返る。――ああ、もう、これは限界。
「ねえ、僕、昇進してから給料上がったんだ」
「へー、良かったじゃねぇか」
 気の無い様子で返る言葉に微かに滲む優しげな色は彼が喜んでくれている証拠だ。少しだけ大きく振られた爪先が浮つきそうな心を押し止めているのを一瞥して、フレンは小さく笑った。
「それで、上がったは良いものの、下町の子に何か買ったり日用品を揃える以外では使う当てが無くて、ほとんど貯金してるんだけど…」
「ふーん、お前らしいな」
 ぱたり。また少し大きく振られる脚。きっと、あまりに彼らしくて、それにすら気分を上向かせているのだろう。白い爪先がふらふらと空で揺れている。同時に揺れる形の良い尻がスカートの裾を少しずつずり上げさせている事には気付いていないらしいが、今のフレンには何ら問題は無い。
 手にしたメニュー表を再度、眺める男の目が熱を帯びて細まる。
「言うと思ったよ。それでさ、まあ、此処で時間延長しても全然問題無いくらいには貯まってるんだ」
「ほー、そりゃすげ………は?」
 心地良い声音に眠りかけていた彼はいつものように返そうとして、失敗した。――何だって?ナニがたまってるって?
 頭の中に流れ込んできた言葉を再度、辿る前に空気を彷徨っていた足首を熱い手が掴み、うつ伏せのユーリの身体を引き摺るように反転させる。ぐるりと回る視界。触れる手が記憶にあるそれよりも遥かに熱くて、柔らかな衝撃に沈められる瞬間、目の前を舞う己の黒髪が矢鱈と緩やかに頬を滑ったと、呆然とする頭の片隅で思う。
 しっとりと光を帯びる脚の間に身体を滑り込ませた男の手が、手際よく担ぎ上げた白い片脚をするりと辿れば、掌から情欲の気配を感じ取った身体が微かに戦慄いた。
「…っ、フ、レン…?」
 羞恥に染まる頬。反射的に抵抗を示す脚。困惑に揺れる深い菫の双眸。どれもが扇情的で、喉が渇く。
「…君がいけないんだよ?あんまり僕を煽るから…」
 言いながら、滑らかな肌に口付けた唇から洩れる吐息が熱く乱れているように感じるのは気の所為ではないだろう。優しく淫靡な音を立てて程好い硬さの脹脛を食む彼の楽しげな様は捕食者が獲物の味見をするようで、酷く妖艶だ。細められた青い瞳が情欲を隠しもせずに甘く微笑んでいるのを見てしまえば、戦慄く身体が熱を上げる。
 だが、次の瞬間、込み上げた熱い息を必死に飲み込んだ肢体の震えに気を良くしたフレンがひらりと今まで眺めていた紙を見せて口にした言葉は、ユーリのトラウマになった。

「とりあえず、まずはこのメニューの一番最初から最後までを一通りオーダーしようかな」

 美味しかったらまた追加するからね。――――浮かぶ笑みは艶美且つ獰猛。




「わぁ。下着まで。徹底してるね」
「ばっか、見るんじゃね…ひぁああっ!」



…うん。楽しかった。すっごく楽しかった。試しに書いてみたTOVフレユリ。フレン壊れてます仕様。
余所様のサイトを少しだけ巡ってみて、どうやら非常識フレン×常識人ユーリが自分の好みらしい、とわかったので書いてみました(オイ)
要は娼婦コス(?)のユーリとお客フレンが書きたかっただけの代物。メニューは…ほら、ナニからナニまでって奴ですよ。一応、当家は18禁サイトではないので割愛しますがね!(…)
適当に書いたので色々間違っているのは間違いないですね…それもご愛嬌(コラ)
ぱんつまで徹底しちゃってるユーリはこの後フルコースを三回くらいヤればイイ(鬼め…!)

2009/10/05