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○○のお時間

「もう、っ無理…ロクシスぅ…」
「駄目だ。そこまで教えてやっただろう。その先は自分でやれ」
「どうやったらいいか…わかんないよ…」
「…イイところまで進めてやったはずだが?」
「う…だって…」
「だって、何だ?」
「だって……出来ないよ…こんなの…」
「埒が明かないな」
「そんな…!」
「それが人に物を頼む態度か?相応しい言い方があるだろう?」
「う…………お、お願い…教えて…?」
「…はぁ。ヴェイン…それは反則だ……だから、」

「このXをここのYに代入すれば…」
「あ。そっか!」
「…これではみすみす答えを教えているようなものだな…」

「……ねえ、フィロ。なんで数学の課題教えるだけであんなに中途半端に如何わしい会話になってんの?」
「それはね、壊滅的に可愛いヴェイン君にロクシス君がベタ惚れなんだけど、ちょっと素直になれてないからだよ!」

 このままこのアトリエにいて良いのか、正直、ちょっとだけ悩んだニケだった。


前回のお仕事シリーズに続いて、またも物議を醸した(?)一般教科シリーズ…。この後にマナケミアでの恒例シリーズ(?)になってしまったり…。まだこの頃は健全でした…まだ、この頃は…(遠い目)
………言い忘れましたが、これは数学のお時間でした(今更!)ヴェインなら会話だけでも萌えられる!と思っていた頃です(…)


「きじょーい、って何?」
 正直、卒倒しなかった自分が不思議だ。

国語のお時間

 ヴェインは常識人だが、妙な所で非常識な部分がある。山奥で猫と暮らしてきた彼の人生を考えればそれも尤もだろうが、如何せん、俗語というものに彼は非常に鈍感だった。勿論、彼自身もその無知を放って置く程、馬鹿ではなく、辞書で調べるか、アトリエの仲間に訊いているのをロクシスは度々、目撃していたし、自分に訊いて来る事があれば分かる範囲で答えてやろうとも思っていた。
 が、これはどうなんだろうか。突然、寮の部屋に尋ねてくるのは良いとして、質問内容が大いに問題だ。
 眼鏡が罅割れる勢いで止まったままのロクシスに、両手で辞書を抱えて――おそらく、それで調べていたんだろう――近づくヴェインは果てしなく無防備だ。自分が何を訊いているのか全く分かっていない。しかも、相手の私室で。
 心配気に覗き込む青い双眸が揺れる。
「…ロクシス?」
「あ、ああ…大丈夫だ…それで、何だって?」
「うん。だからね」
 ああ。頼むから聞き間違いであってくれ。――心から願う声と裏腹に視線は近い距離で話す彼の瑞々しい口元を捉えたまま。情事を想像してか身体の熱まで上がり始める始末。…浅ましい。
 無理矢理に視線を逸らそうとして、可愛らしい声音がそれを止めた。
「きじょーい?って、何?」
 畜生め。何てタイミングで。罵りたくなったが無論、八つ当たりなので堪えておく。
 例えば、これが「きしょーい」だの「きもーい」だのであったなら問題無く意味を伝えて部屋から追い出しただろう。おまけに、くだらない事を訊くな、と付け足したかもしれない。だが、よりにもよって「きじょーい」――「騎乗位」である。そうそう放り出して、他に訊きに行かせる訳にもいかない。放り出したが最後、傷物にされて泣いて帰って来兼ねない。それは何に変えても許せない事だ。しかし、自分に冷静にコレを教える器量があるかと言えば…それもまた怪しい所だろう。
「あの…やっぱり、迷惑…だった?」
 ぽつり。思考を遮り、降り始めの雨粒のような声音が落ちる。目を移した先で彼はきゅう、と肩を竦めて辞書を抱く手に力を込めた。
「フィロに…ロクシスの部屋に行って訊けば教えてくれるよ、って…言われて…」
 来たんだけど。ぽつぽつと小さくなっていく言葉を聞きながら、ロクシスは仕掛け人に密かに暴言を吐いたが、まあ、据え膳食わぬはなんとやら。このお膳立てを利用しない手は無い。
 腹を決めて、ついた溜息は喜びに跳ねていたかもしれない。
「…本当に知りたいのか?」
「え?…うん」
 無垢に瞬く姿はまるで子羊。――――また身体の熱が上がる。
「なら、実地で教えてやるから、覚悟するんだな」

 柔らかな肉にむしゃぶりつく瞬間に笑いながら、狼は眼鏡を外した。


ある意味、起爆剤だった国語のお時間(笑)……実は楽しかったから何もいうまい…。
ヴェインはこういった言葉に鈍そうだなぁと思う訳で。隠語なんかを大きな目をぱちくりさせながら無垢なオーラをふわふわ出しつつ訊いていればいいと思います。
…というか、辞書に騎乗位くらいは載っているだろう。きっと。自分に引く勇気は今のところ、無い!(チキンめ!)


○○のお時間

 ぬらり。濡れた舌が掌から人差し指の先へと辿るその様を、ヴェインは顔にこびり付いた白い液体を拭う事無く震える瞳で見つめていた。
 細く尖らせたそれが唾液の跡を残しながら頂点へと達し、指の側面を下へと辿る。絡みついた白いものを舐め取り、また中指の頂点を目指して登る。繰り返しながら、それは卑猥さを増し、敏感な感性を刺激するくすぐったさとは別の熱を引き出していた。
 見つめれば合う茶の双眸がじっと自分の反応を見つめているのに、また身体が震える。
「ぁ…っ…やだっ…」
「何が?」
 濡れそぼった指の間に吐息を吹きかけて問えば、甘い声が耳朶を撫で、情事で脚を割るように開いて薄い皮膚に熱い舌を押し付けてくねらせれば、更に高く声が上がる。
「…は、あっ……ああっ!だめぇ…!」
 艶やかな吐息で濡れた唇。羞恥と快感とで染まった頬。零れるくらいに潤んだ瞳。白く汚れた顔。全てが愛しくてたまらない。
 目に見えて分かるほど震えながら、それでも拒絶という選択肢を取らない彼に苦笑を漏らしつつ、ロクシスは彼を抱き寄せた。
 常には無い、砂糖菓子よりも甘い囁きがヴェインの身体を走る。
「何が、だめなんだ?」
 囁きだけでぴくりと跳ねる細い身体にまた笑い、もう一度繰り返した。――声が聞きたい。
「何が、だめ、なんだ?」
「んっ…だ、って……もう…綺麗に、なったよ…?」
 だから、離して。真っ赤な顔で小さく秘め事を明かすように甘く答える彼の頤を捉えて、顔を上げさせる。
 そんな顔をするからいけないのだと、何故、彼は一向に気づいてくれないのだろう?それがまた可愛いのだから、仕方の無い事なのだけれど。
 額にキスを一つ。抱きしめる腕は緩めないまま。
「それこそ、だめ、だな」
「?何で?」
「まだ君の顔が汚れたままだ」
 絡み合う視線の引き合うままに唇の距離が近づき――――

「はい。そこまでー!!!」

邪魔された。
「?なんだ、ニケ。邪魔するな」
 仏頂面よりも恐ろしく返すロクシスにも怯まず、三角巾を被ったニケは周りを指差した。
「邪魔するな、じゃないわよ!!今、どういう状況か分かってる!?」
 どういう状況。そんなのは単純明快だ。
「家庭科の調理実習だろう」
 調理内容はケーキの作成の筈。
「わかってんなら、そこでイチャコラしなーい!!」
「そんなことはしていない。ただクリームを被ってしまったヴェインを綺麗にしていただけだ」
 視線を落として腕の中の存在に同意を求める声のなんて甘いこと。

「それだけで家庭科室が鼻血の海になってるんだから、立派な公害よ!」
 うちの班以外の誰一人だって無事に立ってないじゃない!

 後にティッシュを鼻に詰めた担任のゼップル・クライバーは語る。
 ――――何て言うか、ヴェインの色気には僕も参ったね、と。



ミスリードが大好きなクロはこういう話を書くのが大好きです(真顔)
ヴェインは本当に敏感そうです。ちょっと首筋に触れられただけでも「ひゃあっ!」とか可愛い声を上げていればいいです(…)その度に触ったロクシスと触られたヴェインとで真っ赤になって二人してまごまごしてれば可愛いと思いますよ!ロクシスについては激しく張り倒したくなりますが!!(酷)
というわけで。家庭科のお時間でした!…この頃はまだ健全だった…そう。まだ、この頃は…(ぇ)

気がつけば、これも一年以上前の話だというのはツッコまれる前に白状しておきます(笑)

2007/08/28