ごろんごろんごろん。
「さあ、この中からロクシスを選びなさい!」
美味い菌類について
目の前に転がされた多種多様な、茸、きのこ、キノコ。アトリエは最早、茸園だ。――――数多の茸の中心に座り込み、ヴェインは呆然と口を開いた。
「あの…レーネ先輩…?」
意味が分らない。突然、現れるのはいつもの事だとして、今日は嫌がらせでも戦闘でもなく…茸。榎木から舞茸、椎茸、しめじ、エリンギ、仕舞いにはトリュフまで。それこそ世界の茸を集められるだけ集めて来たような大量の茸がアトリエにばら撒かれている様は嫌がらせと言えなくも無いが、いつもは率先して悪人顔を晒しているト二が心底、嫌そうな顔つきでレーネの脇に控えている事からも、今回のこれはいつものそれとは違うものなのだろう。
ヴェインの後ろに無言で佇むロクシスの針のような視線から逃れながら、トニが仁王立ちで胸を張る彼女を小突く。
「……なんていうか…セクハラだろ、これ」
「あんたは黙ってなさい」
膝の上に落ちていたタマゴタケを困惑顔で拾うヴェインを見据えるレーネの顔は戦闘時よりも真剣だ。哀れな彼は仰せの通りに黙るしかない。
逃げ出したいのを必死に堪えながら場に納まるトニを放って彼女は再度、可愛いと評判で、尚且つ、つい最近、何時の間にか、いけ好かない金髪の転校生にぱっくり喰われたと専ら噂の銀髪の後輩に向き直った。
レーネの目から見て、彼が「そういう意味で」食われたのは間違いないだろう。そうでなければ可憐な愛らしさから仄かに香る艶やかさを説明出来ない。ぺたりと座り込んだ彼の可愛らしさは入学当初となんら変わらないどころか鰻上りで増しつつあるが、括れた腰や首筋の淡い色付き、伏せた瞳に宿る色香は無かったものだ。それは可愛いだけだった処女が男を知った時のそれだと断言出来る。恥じらいと、求められる事の嬉しさに胸を焦がす危うい艶。滲むそれらがヴェインを更に惹き立てる。
ヴェインが茸の山を探って数分。ついにレーネの前にそれが差し出された。
「え、っと……これ…かなぁ?」
彼が差し出した物。それは大きな大きな――――――マツタケ。
「ウソだ!!!あり得ねぇ!!!」
沈黙を経て、散々、腰の引けていたト二が声を上げる。
松茸。それは秋の味覚の最高峰に君臨する香り高い一品。否、王様。キング。ヴェインはそれをロクシスだと言う。
ぎゃあぎゃあ喚き立てるトニからヴェインを守るように動いたロクシスは松茸を両手で持ったままの愛しい彼を抱きしめて冷ややかな視線を投げた。
「見てもいない癖に出鱈目な事を言わないで下さい」
見せるつもりもありませんが。言いながらヴェインの頭を撫でる手つきは普段の彼からは想像もつかないくらいに優しげだったという。
人は見かけによらないのねぇ、とはトニがロクシスにぶちのめされた後のレーネの言葉。
前回から調子に乗りすぎてヤってしまった下品なSS(笑)
いや、毎回こんなノリっちゃあ、こんなノリなんですが…これは久々にあからさまにヤったなぁ、と自分でも若干反省していなくもないです…ふへへ。
一生懸命、真面目にキノコを選ぶヴェインを妄想しつつ、常識人なトニを書くのがとても楽しかったSSSでした…。
ごろんごろんごろん。
「さあ、この中からヴェインを選びなさい!」
美味い菌類について
目の前に転がされた多種多様な、茸、きのこ、キノコ。アトリエは最早、茸園だ。――――数多の茸の中心に佇み、ロクシスは溜息をついた。
「またくだらない事を…」
馬鹿馬鹿しい。トニとレーネが突然、現れるのはいつもの事だとして、今日は嫌がらせでも戦闘でもなく…茸。榎木から舞茸、椎茸、しめじ、エリンギ、仕舞いにはトリュフまで。それこそ世界の茸を集められるだけ集めて来たような大量の茸がアトリエにばら撒かれている様は嫌がらせと言えなくも無いが、いつもは率先して悪人顔を晒しているト二が心底、嫌そうな顔つきでレーネの脇に控えている事からも、今回のこれはいつものそれとは違うものなのだろう。
無駄な時間を割かせるな、と語る、死神も尻尾を巻いて逃げ出すようなロクシスの視線から逃れながら、トニは仁王立ちで胸を張る彼女を小突く。
「……なんていうか…アイツに殺されんぞ…もう目が殺る気…」
「あんたは黙ってなさい」
手近のしめじの欠片を無表情で拾うロクシスを見据えるレーネの顔は戦闘時よりも真剣だ。その真剣さを常でも発揮してくれと思いながら、少しでも被害を被りたくない彼は仰せの通りに黙るしかない。
デュエリストを食らう前に撤退したいのを必死に堪えながら場に納まるトニを放って、彼女は再度、陰険で無愛想でムカつくと評判で、尚且つ、つい最近、何時の間にか、純粋培養の可愛い銀髪の同級生をぱっくり喰ったと専ら噂の金髪の後輩に向き直った。
彼が「そういう意味」でヴェインを喰ったのは間違いない。ロクシスの傍らに佇んで目を瞬かせる彼を見れば一目瞭然だ。茸を選別するロクシスを見つめる潤んだ瞳は不安げに揺れ、仄かに上気した頬が淡い桃色に染まっている。気が昂ぶっているのか、常よりも早くなる呼吸の感覚に唇が僅かに開けば、ちらりと見える小さな舌が艶かしく動く様が見えた。――この色気は処女が持つものでは無い。
改めて確信したレーネが一人、頷いたのと、ロクシスが選別を終えたのは同時だった。
投げ捨てられた一本の榎木がぽとりと床に落ちる。
「無いですね」
一言。
「へ?」
「ですから、無いです」
これだけの茸を集めて、それでも、無い。彼女は呆然とした表情のまま、その実、愕然とした。――嫌がるト二をマナでしばいて引きずり回して集められるだけの茸を集めさせたにも関わらず、ロクシスはこの中に当て嵌まる物は無いと言う。それなら何なら当て嵌まるのだろう。ぷるぷるのゼリーだろうか?否、プリン?白玉…?
黙考し始めたレーネにロクシスはまた溜息をついた。
「何を考えているか知りませんが、どれでも無いですよ。そもそもそんなものにヴェインを喩える方が間違っています。ヴェインの可愛さは何を使っても表現仕切れませんよ。白い肌の中心で震える淡いピンクの…」
ヴェインが如何に可愛いかを語り始めたロクシスと興味深げに目を輝かせて耳を傾けるレーネを余所に、取り残された二人は必死の形相で攻防戦を繰り広げていた。
「トニ先輩!!と、と、止めて下さい…!!やめさせて下さいー!」
「ば、馬鹿!引っ付くな!俺がロクシスに殺されるだろうが!」
俺だって死にたくない!真っ赤な顔で縋ってくる涙目のヴェインを邪険にする事も出来ず、身を捩って逃れようとするトニの背を、刹那、冷えた何かが昇る。――――そっと目を向ければ、修羅の眼差し。
血の気が引くどころか、寿命が縮んだ。
「ヴェイン、離れろ!頼む!離れてくれ!あいつ、本気で目が殺る…」
言葉が切れた理由は相棒だけが知っている。
更に調子に乗って書いたSS…(遠い目)下品どころじゃすまなくなってきたので、トニに犠牲になってもらいました(酷)
とりあえず、キャラが壊れまくっている事だけは確かです…。
サイズ
「嘘だっ!そんなの信じられない!」
弱みを探すべく通りかかったアトリエから聞こえた叫びに、トニとレーネは扉に齧り付いて聞き耳を立てた。
叫び声はヴェイン・アウレオルスの物に間違いないが、常に天然すぎる程天然で温厚な彼が声を荒げる事は滅多にない。聞こえた場所が彼が所属するアトリエだという事から、他メンバーとの諍いだと推測出来るものの…彼がそんなにも激昂する事とは何なのだろう。
これは彼らの関係を壊すことの出来る良いネタかもしれない。そんな思いが湧き上がり、二人は顔を見合わせてニヤリと笑った。
「信じられない、と言われてもな…これが事実だろう」
「嘘っ!ロクシスは絶対、僕と一緒のサイズだと思ったのに!」
ロクシス。一時は自分達のアトリエにも所属していた小生意気な後輩の名を捉えて、また二人は顔を見合わせる。――最近は随分と仲が良くなったと聞いていたのだが…また諍いを起こしているのだろうか。
「しかも、サイズって何だ?」
「知らないわよ。あ、ほら、まだ何か聞こえる」
小声で交わした二人は直ぐに息を潜めて耳を済ませた。
「ロクシスは絶対、Sサイズだと思ったのに!!脱いだらMサイズだなんて詐欺だよ!!なんでそんなにおっきいの!?」
「ぶっ!!!」
「馬鹿っ、怪しまれちゃうでしょっ」
噴出したトニの口を塞ぐレーネだが、扉に齧り付いている時点で怪しいという事実には全く気付いていない。
Sサイズだと思ったらMサイズ。しかも脱いだら大きくて詐欺。――――とりあえず、卑猥な妄想しか浮かばないのは何故だろう。
「グンナル先輩は明らかにサイズが違うって分るけど…ロクシスは僕と同じだと思ったのに!」
「…身長と体格が違うだろう。君の方が華奢だ」
「4センチしか違わない!!」
「4センチも、だ」
ここまで食い下がるヴェインも珍しい。困ったように諭すロクシスにもそうそうお目にかかれない。非常にレアな現場だがドアを開けて覗く勇気は今のところ、起きない。覗いたら覗いたで野暮だ。見つかったら最後、馬に蹴られるどころか光に貫かれて三途の川を見る破目になる。と、思う。
だが、大声でこんな会話をするのも…風紀的に如何なものか。当初とは違う意味で逡巡する二人の耳に今度は恥じらいを帯びた声音が滑り込んだ。
「…そ、そんなにおっきいなんて…知らなかったんだもん…ロクシスのばかぁ…」
「ぐっ!!ごほっ、ご…もごっ!」
「ばれちゃうじゃないのよ!ああ、もう!退散!!」
鼻血を噴く勢いで咳き込むトニを引き摺って、彼女は自分達のアトリエへと廊下を駆け抜けた。
さて、真相はいかに?
私にしては珍しく改行の多いSSでしたが…たまにはこんな書き方もいいですね!読みやすくて!(…あれ?いつもは?)
さて。この話は勿論、制服のサイズの話だったわけですが…誰ですかー?なんだか違うモノのサイズだと思っている人はー?(にやにや)まあ、そっちの話だとしても、グンナルがLなのは間違いないでしょうけども。ヤツのマグナムすごいぜ、きっと(黙れ!)
今回は色々と調子に乗りすぎた拍手だったわけですが…うん。後悔してない辺り、反省してないな、自分!(…)というか、ここまでアレなものを書くのも珍しいですね…。
2007/11/20 |